コーヒー文化は、これまでいくつもの「波」を経て進化してきました。直近の「第3の波」は、スペシャリティコーヒー豆の品質向上、それを活かすバリスタの技術、一人ひとりの好みに合わせた抽出方法など、個性とストーリーを重視する時代でした。
しかし、ここへ来て私は、新たな潮流――いわゆる「第4の波」が「自宅でのコーヒー体験」にシフトしつつあると考えています。
第4の波:「誰でも自宅で美味しいコーヒーを」
コーヒーの新時代は、もはやカフェだけのものではありません。自宅で誰もが高品質なコーヒーを楽しめる時代が来ているのです。
コーヒー初心者として様々な器具を試し、カフェ巡りを重ねる中でたどり着いた結論があります。それは「誰でも、いつでも、自分の好きなタイミングで家で美味しいコーヒーを楽しめる時代が来る」ということです。以下、その理由を3つ挙げてみます。
理由1:挽きたての豆をいつでも楽しめる
豆を挽いた直後に淹れるコーヒーは、その豆本来の風味を最大限に引き出します。カフェによっては目の前で焙煎豆を挽いてくれることもありますが、そうでない店では「いつ挽いた豆なのか」がわからないケースも多い。しかし自宅なら、焙煎豆を購入し、飲みたい時に自分で挽くことで常に"挽きたて"の味を堪能できます。
さらに、最近は初心者でも均一に挽ける高品質な手挽きミルや、豆の投入から抽出まで全自動で行えるコーヒーメーカーが手軽に入手可能となりました。技術や経験が少なくても、これらのデバイスを使えば簡単に美味しい一杯を淹れられます。加えて、日本の水道水はそのままでも比較的美味しく、わざわざミネラルウォーターを買い足す必要がありません。水や挽き方を含めた環境全体を自宅で最適化できることが、コーヒーのクオリティ向上に直結します。
理由2:価格面での優位性
カフェのコーヒーは、一杯あたり500円することも珍しくありません。サードウェーブ以降、品質や希少性が重視されることで高価なスペシャリティ豆への需要が高まり、その結果、提供価格は底上げされました。ここには国際的な豆の取引価格上昇も関係しています。
一方で、自宅抽出なら、豆をまとめ買いしたり、ランクや産地を自由に選ぶことで、一杯あたりのコストを大幅に抑えることが可能です。
カフェで1杯500円するコーヒーが、自宅では1杯100円以下に抑えられるケースも多いのです。こうした価格面での優位性は、自宅コーヒー文化普及の大きな後押しとなるでしょう。
理由3:自宅焙煎の可能性
さらに注目すべきは、自宅焙煎の可能性です。最近では、家庭用焙煎器具が続々と登場しています。筆者自身も先日、自宅で焙煎できる鍋を購入して試し始めました。もしこれが簡便に使え、誰でも鮮度抜群の焙煎豆を手軽に手に入れられれば、コーヒーの「第4の波」は確固たるものになるでしょう。
自宅での焙煎から抽出まで、工程のすべてを自分でコントロールできる時代は、「コーヒー=外で飲む高級嗜好品」という既成概念を覆し、「コーヒー=日常生活の中で自由にカスタマイズできる個性的な一杯」へと変容させています。
まとめ
第1の波は大量消費のインスタントコーヒー、
第2の波はスターバックスなどのシアトル系コーヒーチェーンによる「カフェ体験」、
第3の波はスペシャリティコーヒーによる「品質と個性」を重視した時代。
そして今、「第4の波」は「自宅で誰もが簡単に、コストを抑えつつ、鮮度と品質を追求できるコーヒー体験」へと向かいつつあります。
豆の選定から焙煎、抽出まで、すべてを自分の手で行うことが可能になった今、これまで以上に自由で豊かなコーヒーライフが私たちの目の前に広がっています。自宅でのコーヒー体験の深化は、まさに新時代の幕開けなのです。